2013-09-15
ノルウェージャズ
ここ数年、一年に1、2回、ノルウェーから来日するミュージシャンのツアーのマネージャーをしている。北欧、ではなくノルウェーだけ、です。かの国がどこにあるかもよく知らなかった私ですが、ひょんなきっかけから知り合い、もう5年ぐらいはマネージャー業を続けている。
ノルウェーでは音楽大学も充実しているし、ミュージシャンに対する保障も手厚い。夏休みはサマーハウスで2週間ぐらいはゆっくり休み、クリスマスももちろん休んで家族でのんびり。ほんとに羨ましい。何となくみんなあくせくしていないし、のんびりしてる。それが、音楽にも反映されているように感じる。
「北欧ジャズ」は日本人のジャズ愛好家の間でも最近ファンが多い。ただ、ノルウェーのジャズは他の北欧諸国のものとは少し違うように思う。
ジャズというのはもともとアメリカからの音楽。日本だと、戦後、進駐軍のバンドでジャズを始めた人も多いだろうし、アメリカから輸入されたものを真似することから始まっている。だから、日本でジャズといえば、主にアメリカンスタンダードだし、他の国でもそうだと思う。ヨーロッパでも、多くのアメリカ人ジャズミュージシャンがコンサートを行い、また、ヨーロッパに移住したミュージシャンも多い。
●ノルウェーの山並み
ノルウェーは北欧の中でも端にある、人口500万人ほどの国。この人口にしては数が多いんじゃない?と感じるぐらいミュージシャンが多く、しかも世界レベルで活躍する人も多い。国内に良い音楽大学が多いことも影響している。私の知るミュージシャンはほとんど全員国立の音大卒業だ。
ノルウェーのジャズについて大使館の人と話した事がある。
アメリカのジャズがヨーロッパを席巻していた頃、他の国々ではジャズのコンサートが大々的に行われていたが、ノルウェーは素通りだったらしい。そのため、アメリカのジャズに影響されない、独自のジャズが生まれたという。
●ベルゲンの街
今では、夏の時期を中心にノルウェー国内でも数々のジャズフェスティバルが開催されている。
一度、ノルウェーのベルゲンという日本で言うと京都のような都市で開催されたジャズフェスを聴きに行った事がある。
今まで耳にした事のないような音楽がいっぱいあった。どこまでを「ジャズ」というくくりにするのかは迷うところだけど、とにかくいままで耳にしてきた「ジャズ」はどこにもなかった。
だれも4beatは演奏していない、もちろん「ジャズスタンダード」もなし。かなり実験的なものも多かった。見た目は普通の編成(キーボード、ドラム、ギター)だけど、それぞれの楽器から本来聴けるはずであろう音が聴こえてこないバンドもあった。しかし、彼らの音楽は100%間違いなく「ノルウェー産」だと思った。
●Nattjazz@Bergen
おそらく、ほとんどのミュージシャンは先人の模倣、いわゆるコピーすることで多くを学ぶと思う。
コピーをする事で、早く色々な事を学ぶ事ができる。けれど、何かしら、音に多少の影響、というか、反映はされると思う。しかし、ノルウェーの音楽にはそれがほとんど感じられない。練習の過程で、コピーということをほとんどしないらしい。なるほどなぁ。
先日も、ノルウェーから来日した「Eple Trio」というピアノトリオのツアーがあり、知り合いのピアニストが聴きに来ていた。彼女は、「今まで聴いた事のない音楽で、楽しかった!」といっていたが、彼らの音楽は、まさしく、いままで聴いた事のない感じなのだ。
Eple Trioだけではない。他のバンドにも共通して言える事は、中身もバンドの人数も違うし、勿論、それぞれにオリジナリティがあって、どのバンドも全く違うのだけど、でも、彼らの音楽の奥には深く広がる森のような光景があるということ。そして、1曲1曲が物語を持ち、ストーリーのある展開をみせる。もちろん、ジャズだし、即興だから、毎回中身は違う。
ひとつのコンサートで、8曲ぐらいは演奏されるから、8個のショートストーリーを体験することになる。
聴いていると、心のどこかがざわつく感じで、自分の中に様々な映像が浮かぶ。
ノルウェージャズってどんなの?という質問を良く受けるけれど、私の答えは、今のところ、「短編映画のようで、今までに聴いた事のない音楽。それでいて、なにか懐かしい感じ」。スカンジナビアの風景は私たち、日本人にも親しみのある風景かも。
年に数回はツアーがありますので、是非今度の来日の際は一度聴いてみてくださいね!
詳しいツアー情報はこちら→Jazz From Norway
●Eple Trio
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