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ジャズベーシストが語る超私的JAZZのはなし

2013-12-5
My favorite Jazz Vocal

ジャズボーカルを聴くのが好きです。今回はそんな私の愛聴盤をご紹介したいと思います。

たまに、「ジャズボーカルって誰を聴けばいいの?」と聞かれることがあります。
そんなときはとりあえず私の思う「3大女性ジャズボーカル大御所」のCDをおすすめしています。

Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)
Sarah Vaughan(サラ・ヴォーン)
Carmen McRae(カーメン・マクレェ)

この3人の演奏はだいたいどれも素晴らしく、聴いていて本当に飽きない。
たくさん録音があり、これ、というものを挙げるのも難しいけど、3枚程私の好きなCDを紹介します。

*Ella Fitzgerald
「Ella & Louis」(1956年)

エラとルイ・アームストロングのデュエットの名盤。この翌年には「Ella & Louis Again」が録音されている。どちらも超オススメ。聴くと間違いなく暖かな気持ちになる(個人差はあります)。バックはドラムに大御所バディ・リッチを加えたオスカー・ピーターソントリオ。ピアノトリオの演奏もすごい。オスカー・ピーターソンは好きだけど、ピアノトリオの演奏だけだとテクニックに圧倒され過ぎて、何となく疲れてしまうことがあるけど、ボーカルの演奏は本当に素晴らしいと思う。たくさん音を弾いているのに邪魔になっていない。こんなことができるのはオスカー・ピーターソンだけだろうなー。

「Ella At Duke’s Place」(1965年)

ジャズの神様、Duke Ellington楽団との録音。何が素晴らしいって、選曲が素晴らしい!!。1曲目の「Something To Live For」と2曲目の「A Flower is a Lovesome Thing」が特に好き。この2曲はエリントンではなく、エリントンの右腕でもあった、ピアニストのBilly Strayhornの作曲。私だけでなく、多くのミュージシャンが彼の曲を愛する。どの曲も聴いていて、胸が締め付けられるような、「きゅーーー」って感じになる(説明が稚拙ですみません)、名曲ばかり。それをエラが丁寧に歌っている。もちろん、これぞエリントン!という「Cotton Tail」も素晴らしい。このアルバムはエリントンの名曲だけど、あんまり知られていないだろう曲が多く入っていると思う。今も聴きながら書いているけど、ほんとーーーうに素晴らしいです。ところどころで聴けるアルトサックスのJohnny Hodgesのソロも素晴らしい。

「Take Love Easy」(1975年)

ギタリスト、Joe Passとのデュオシリーズの4連作の1枚目。この他に「Sophisticated Lady 」、「Easy Living」、「Fitzgerald & Pass Again」、「Speak Love」がある。晩年に近いレコーディングで、声の感じも昔とは違っているけれど、名手ジョー・パスとのリラックスした雰囲気の演奏はすばらしい。声も楽器なんだなー、とつくづく感じさせられる。ギターとボーカル、という編成で、チャーミングなエラの魅力満載。4枚とも楽しめます!

*Sarah Vaughan
「Crazy & Mixed Up」(1982年)

このアルバムは本当に良く聴いた。大好きな1枚。バックのメンバーも素晴らしい。
Roland Hanna(piano)、Joe Pass(guitar)、Andy Simpkins(bass)、Harold Jones(drums)
演奏で行き詰まった時に何故かいつも聴いていた。最初から最後まで名演。ボーカル的にはこのアルバムは「枯れ葉(Autumn Leaves)」の演奏で有名だと思う。有名なシャンソンの曲で、ジャズでも良く演奏される曲だが、このアルバムでは歌詞を歌わず、スキャットで歌っている。これも聴き所。でも、私はピアニストのローランド・ハナが本当に素晴らしい演奏をしていると思う。「That’s All」は特に好きな曲だが、この曲の彼のソロは素晴らしい!!ジョー・パスの”合いの手”的なギターも素晴らしい。最後の最後に半音上がるところも嬉しくて、聴いていて「わーーーい!!」ってなります。

「After Hours」(1961年)

ギターデュオ+ボーカルという渋い編成のアルバム。
Mundell Lowe(guitar)、George Duvivier(bass)
自分で演奏する場合もギターとデュオの演奏は最も好きな編成。この「すき間だらけ」な感じがいいんですよね。ベーシストのジョージ・デヴィヴィエはあまり知られていないかもしれませんが、私の好きなベーシストの1人。渋い。このアルバムの中では「Wonder Why」「Vanity」がお気に入りです。

「Sassy Swings the Tivoli 」(1963年)

コペンハーゲンのチボリ公園でのコンサートのライブ録音。2枚組で全32曲、とサラの好演がたっぷりと楽しめる。自由に楽しそうに歌っていて、聴いていても楽しい!1曲目の「I feel pretty」から楽しい気分になれます。You Tubeにもこのコンサートの映像があがっている。32曲、全てジャズのスタンダード、それも大スタンダード。聴きたい曲のほとんどが入っているんじゃないか??という感じです。このときのベーシストはバスター・ウィリアムス。まだ若かりしころの彼の演奏も素晴らしいんです。カッコイイ!

*Carmen McRae
「The Great American Song Book」(1972年)

これも良く聴きました。特に「Satin Dall」がベースと歌のデュオで始まる。イントロがベースで、コピーしました。このアルバムのギターもJoe Pass。カーメンが「I Only Have Eyes For You」の曲の途中で「I Only Have Eyes For You, Joe Pass〜」と歌ってるところもあって、カーメンが演奏を楽しんでいることが伝わってきて楽しい。曲目が「Great American Song」かどうかは聴く人によって意見が分かれるところだと思うけど、私的には好きな選曲です。「What Are You Doing the Rest of Your Life」やレオン・ラッセル作曲の「A Song for You」が特に好きかな。

「Carmen Sings Monk」(1988年)

ピアニスト、Thelonious Monkの作曲の曲を歌ったアルバム。セロニアス・モンクもミュージシャンに人気のピアニストだと思う。彼の創る曲は独特で、難曲であることも多い。でも、演奏していて楽しいんです。ほんとに難しいけど。このアルバムに入っている曲はモンクの曲なので、歌詞はない。ほとんどの曲にボーカリストのJon Hendricksが歌詞をつけている。
サックスはセロニアス・モンクカルテットのCharlie Rouse 。カーメンのモンクへの愛情と尊敬が感じられる名盤です。モンクの演奏と聴き比べてみるのもおもしろいです。

「After Glow」(1957年)

歌の歌詞をじっくり楽しめるアルバムだと思う。歌に表情があって、歌詞も聞き取りやすい。ピアノはRay Bryant。彼のピアノも素晴らしい。カーメン自身もピアニストで、彼女の弾き語りも録音されている。晩年のカーメンの映像をよくYou Tubeで観るのだけど、バックのピアノトリオにいつも不満げな印象がある。そして、ミュージシャンたちもどことなく、ビクビクしながら演奏している感じがする・・・。演奏中にカーメンにらまれたら恐ろしくて、おちおち演奏していられないと思うけど、カーメンも、もっといいミュージシャン使えばいいのになぁ、と思う。ミュージシャンの友人にその話をすると、「ギャラの問題じゃない?」って話になる。それもあるのかなぁ。とにかく、このアルバムでは、カーメン初期の名演が聴けます。私のおすすめは2曲目の「Guess Who I Saw Today」。聞くも語るも恐ろしい、夫の浮気現場に偶然遭遇してしまった奥サマが、それに至るまでの状況を、浮気現場から仕事帰り、と偽って帰ってきた夫に話す、という内容の歌。何度聞いても怖い曲です〜。

もっともっと紹介したいアルバムもあるし、他にも好きなジャズボーカルのアルバムもたくさんありますので、また紹介できたらな、と思います。
You Tubeにもいい映像がたくさんありますが、是非CDで聴いてみてくださいねーー。

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若林 美佐
若林 美佐

わかばやし・みさ/ジャズでは珍しい女性ジャズベーシスト。奈良県出身。小学3年生から打楽器を始め、大学生の頃にジャズベースに興味を持ちエレキベースを手にする。一旦は就職し、真っ当な社会人生活を送るも、「ジャズベーシストになってみようかな・・・」という思いから退職し、ウッドベースを習い始める。同時に(強引にも)プロミュージシャンとして活動を開始。2002年にはNYに渡米。帰国後、活動拠点を関東に移し、現在は首都圏、関西を中心にライブ活動中。

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