salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

ジャズベーシストが語る超私的JAZZのはなし

2014-04-5
ベーシストへの長〜い道のり

料理でも陶芸でも役者でも、何でも「その道」を極めるには相当の時間がかかる。楽器を始めて4,5年のころ、NY在住のミュージシャンの方と話をしていて、私が「ミュージシャンの心構えっていうか、なにかアドバイスありますか?」とお聞きしたところ、

「30年やってみて、それでダメなら向いていないかもしれないということだから、焦らないで続けること。最初の10年は楽器の修得、がむしゃらに演奏して、次の10年で様々な偉大なミュージシャンのコピーしたり、研究、次の10年で自分の演奏にしていく。これが唯一のアドバイスかな。」

とのお答え。
「30年かぁ・・・。」とそのときは思ったけど、現在ベースを手にしてからはや15年程経つが、あのとき言われたこの言葉が本当だった、と実感している。

ウッドベース、という楽器を修得するだけでも難しい。死ぬまでに修得できるかな?という感じである。そして、ただ弾いていればいい、というものでも、もちろんない。
今現在、何が難しいかと言われれば、「ベーシストになる」ということだと思う。ベースを弾いている限り、ピアニストでもドラマーでもなく、ベーシストなんだけど、楽器が弾けるからベーシストか、というと、それはなんとなく違う気がする。

バンドで一番重要な楽器はベースだ、とよく言われる。ベースという楽器はリズム楽器であり、コード感の根本を牛耳っているポジションでもある。とても重要な楽器だ、ということはなんとなく知ってはいた。けれども、経験を重ねる毎にその重要性が身にしみてわかってきた。

わかったから、と言ってすぐに演奏に反映できるわけでもなく、「わかった」ことで日々の演奏は昔よりもタイヘンになってくる。でも、タイヘンだーー!と言っていても物事は解決しないので、すこしづつでも階段を昇っていかなければいけない。

ベースのレッスンを受け始めたころ、師匠からベーシストの役割についてのたとえ話を聞いたことがある。

「船に乗って、いろんな舟から出ている紐(私のイメージでは鵜飼使いみたいな・・・)を持って、前に進むんだけど、常に持ってる紐の先の舟の行き先を把握しつつ、行き過ぎた舟があれば紐を引いたり、迷ってる舟があれば少し戻したり・・・、こんな感じかなー。」

難しいたとえで、よくわからん!と15年前は思っていた。
今は、人によって感じ方は違うだろうけど、ベーシストの位置ってこういう感じかも、と思う。
そして、この紐の引き加減、というものの修得にかなりの時間がかかる。20年過ぎた辺りの自分にそれが出来ていればいいな、と思うんだけど、どうかなー。

この間、佐藤允彦さん、という素晴らしいピアニストの演奏を聴いた。私の大大好きなボーカリスト、後藤芳子さんとの演奏だったんだけど、そのとき聴いていて驚いたのが、後藤さんのまわりにベルベットのような柔らかい布が見える!ということだった。
もちろん実際に布があるわけではないけど、ボーカルの人を包む、でもなく、ただ伴奏している、でもなく、言葉が難しいけど、後藤さんがどこに行っても心地よく歌えるように場を作っていってる、という感じだった。一緒に聴いていた友人も(私が布の話はしていないのに)「ビロードみたいな演奏だね」と言っていたので、私の感覚だけではないのだろう。こんな風に演奏できればどんなに素晴らしいのだろう、と思った。

長い道のりではあるけど、あっという間の15年。この先もきっとすぐに過ぎて行くんだろうなぁ。あと15年過ぎた自分の演奏を楽しみに、日々歩こうと思います。


ネットで見つけた10年以上前のワタクシ。若いです。高槻JKカフェにて。


6年程前、高速道路で事故後、むち打ちのままでのライブ。痛かったなぁ・・・。京都Candyにて。

そんな私のお知らせ。
日々、いろいろな場所でライブをしていますが、来月、モロッコレストランでのライブがあります。食べたことが無い方もいらしゃると思いますが、辛くないスパイスを使った、日本人の口にもあうお料理です。この機会に是非〜。エキゾチックな店内でのライブ、演奏する私たちもどんな感じになるか、今から楽しみにしております。

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「Jazzとモロッコ料理の夕べ」
5月19日(月)19:00オープン、20:00スタート
二子玉川 ルマグレブ
世田谷区玉川3-10-11
(玉川高島屋南館うら)
予約Tel:03-3709-2664
またはメール: mail(at)soundkitchen.jp
出演:石川 真奈美(vo)、田口 悌治(g)、若林 美佐(b)
MC:5,000円(1drinkとディナー付き)
モロッコワインやビール等もあります。ディナーはスープ、サラダ、メインがついていますので、しっかりお食事も楽しんでいただけます。

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ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

1件のコメント

時間が経過したブログにコメントで失礼します。自分も学生時代にジャズ研でウッドベースでやっていました。もう40年近く前。若い方が、新たなジャズを切り開いていくことを期待しています。

http://kubo.sblo.jp/

by 日々JAZZ - 2015/08/22 12:17 AM

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若林 美佐
若林 美佐

わかばやし・みさ/ジャズでは珍しい女性ジャズベーシスト。奈良県出身。小学3年生から打楽器を始め、大学生の頃にジャズベースに興味を持ちエレキベースを手にする。一旦は就職し、真っ当な社会人生活を送るも、「ジャズベーシストになってみようかな・・・」という思いから退職し、ウッドベースを習い始める。同時に(強引にも)プロミュージシャンとして活動を開始。2002年にはNYに渡米。帰国後、活動拠点を関東に移し、現在は首都圏、関西を中心にライブ活動中。

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