salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

ジャズベーシストが語る超私的JAZZのはなし

2014-03-5
レコーディング

私はいくつかレギュラーで参加しているバンドがあって、そのひとつに女性ばかりのバンドがあります。最近の女性ミュージシャンの活躍はめざましいものがありますが、女性だけのバンド、というのは少ないと思います。
海外でも珍しいらしく、外国の友人に女性バンドをやっている、というと、みんな「Oh!Geisha Jazz!」とか、「You should wear KIMONO!(着物きてライブすれば!)」とか勝手に盛り上がっています。

で、現在その女性バンドでレコーディング中です。

ジャズのレコーディングは、テイク1か2ぐらいで録ってしまうということが多いです。メロディを演奏したら、あとはアドリブなので、何回も演奏してしまうと飽きてくるし、アイデアもなくなる。今は録音技術がものすごくて、切って貼って、はもちろん、音までも変えられる(もっとすごいことももちろんできる)。ジャズのレコーディングでそこまでは必要ないですが、いざとなれば気に入らないところだけ演奏しなおして、差し替えも可能なわけです。

最近録音されたCDを聴いたり、自分がレコーディングしても感じることだけど、いくら技術が発達してとしても、ジャズの録音は1950年代ぐらいのレコーディングがジャズらしくて好きだなー。みんなで輪になって、真ん中にマイクおいて、せーの、で録音。おそらくほとんどの録音がテイク1だったと想像する。
だれかがコードを間違ってたり、進行がうやむやになってる録音もいっぱいある。ジャズファンとしては、その間違い探しもジャズを聴く楽しみのひとつ。間違いだ、と聴こえていたところが、10年後聴いてみると、間違いではなく、効果だった、とわかったり、やっぱり間違いだとわかったり、テナーサックスの人が進行を間違って、ピアノトリオが慌ててフォローしてるな・・・、などなど、何年間も同じ音源で楽しめる。演奏者本人としては、間違ってない方がいいに決まってるんだけど、聴いている側にしてみれば、「コルトレーンはこう吹いてるけど、ビル・エバンスは何か違うことを弾いてる気がする」とか「ポール・チェンバース、ピアノと違うこと弾いてるなぁ」とか、いろいろ楽しい。自分が演奏する側になった場合は、こんなこと楽しめませんけど。
録音自体もライブ感があって、すごくいいオーディオで聴くと、ミュージシャンがすぐそこで生で演奏しているように聴こえる。

今は、個別の小部屋に入って、ヘッドフォンでみんなの音を聴きながらのレコーディングが多いと思う。別々に音を録っているので、クリアに音が録れるし、どうしても気に入らない場合には上で書いたように、差し替えできる。

一曲演奏して、その演奏を聴いて確認、という作業を続けていると、次第に自分の演奏のアラが聴こえてきて、録りなおしたい、と思うところも多々出てくるのですが、それぞれの演奏を聴いて互いに影響されながら曲が出来上がっていくので、多少自分の演奏が気に入らなかったとしても、直さない方がいい場合も多い。いろいろいじっていると、せっかくのライブ感もなくなってしまうし・・
今のところ、順調にレコーディングが進んでおります。

レコーディングよりも緊張したのが、ジャケットの撮影だったりして・・・。
女性バンドだし、せっかくなので、ちゃんとヘアメイクさんに来ていただいて、プロのカメラマンさんに撮影していただきました。
いやぁ、顔がこわばる!マイクを立てて演奏するのも確かに緊張しますが、写真のほうが緊張したなぁ・・・。子供のころから写真に撮られるのが苦手で、いっつも口が「んーー」というカタチになっていたり、目線が定まらなかったりしていた。出来上がった写真を見ると、子供のころと変わらないこわばりよう・・・(笑)。

CDは4月ころに発売予定です。まだレコーディングも完了していないのに、発売記念ライブは次々と決まっています。無事に発売できますように・・・!

吉野 ミユキカルテット:
吉野 ミユキ(アルトサックス)
外山 安樹子(ピアノ)
若林 美佐(ベース)
鈴木 麻緒(ドラム)


photo by Kenji Okazaki

〜CD発売記念第一弾ライブ〜
4月25日(土)、吉祥寺・サムタイム 
音もよく、食事もちゃんとおいしい、東京の中でもおすすめのジャズクラブです。

ご意見・ご感想など、下記よりお気軽にお寄せ下さい。

コメントはまだありません

まだコメントはありません。よろしければひとことどうぞ!

コメントする ※すべて必須項目です。投稿されたコメントは運営者の承認後に公開されます。


コメント


若林 美佐
若林 美佐

わかばやし・みさ/ジャズでは珍しい女性ジャズベーシスト。奈良県出身。小学3年生から打楽器を始め、大学生の頃にジャズベースに興味を持ちエレキベースを手にする。一旦は就職し、真っ当な社会人生活を送るも、「ジャズベーシストになってみようかな・・・」という思いから退職し、ウッドベースを習い始める。同時に(強引にも)プロミュージシャンとして活動を開始。2002年にはNYに渡米。帰国後、活動拠点を関東に移し、現在は首都圏、関西を中心にライブ活動中。

そのほかのコンテンツ