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漫才協会名誉会長 内海桂子さん スペシャルインタビュー (第3回)

第3回 恋も仕事も人生も、女は甲斐性!

編集部多川(以下・編た)

それでは、内海師匠の恋愛トークを(笑)。

内海

恋愛っていってもねぇ。仕事で頼まれて、無理に助けてやったみたいな話ばかりで、惚れたはれたの色恋は無縁だわね。だってそんな暇なかったのよ。ちょうど年頃のときに戦争だったからね。でもいっぺん惚れたのはね、あそこに描いてある兵隊さん(写真下:師匠の家に飾られた自筆のイラスト)。おんなじ町内の駄菓子屋の息子だったわ。

編た

その師匠が惚れた兵隊さんはどんな人だったんですか?

内海

いつも一緒に遊んでくれてた幼馴染みみたいなもんでね。それが兵隊に取られて、戦争から帰ってきたときにうちに来たのよ。聞けばすでに女房がいると。で、「女房は郷里に帰ってるから、手紙ならくれてもいいよ」とか洒落臭いこといってくるから一気に冷めたわよ。「うるせえーやい! 天下の内海桂子が手紙だすなんて、冗談じゃないよ」って啖呵切って追い返してやった。

編た

それって、恋愛というか何というか。まあ確かに、惚れたはれたのレベルでは語りきれない男女の機微ですね(苦笑)。師匠は、女性として家庭に入って、旦那や子どものために生きたいとか、そういう結婚願望みたいなのは一度も抱いたことがない?

内海

ないわね。最初の子どもの相手も次の相手もかみさん付きだったから結婚なんか考えもしない。2番目の相手の奥さんが病に伏せてたらそこに仕送りして、おまけにその奥さんが面倒見られないからってそこの子どもを引き取って育てたり。

編た

一度寝たら一生面倒見るのは女の方、みたいな(笑)。ってことは、男の稼ぎや甲斐性はどうでもいい?

内海

自分は何やっても働いて稼げるから、男をあてにする必要がないわね。(現夫・成田さんを指して)いえば、この人もそうよ。この人の稼ぎで我が家の生計は成り立っているんだけど、その稼ぎ元はわたしですからね。

一同

内海

わたしの唯一の必需品はお酒。だから、お客さまが毎年各地の銘酒や地酒を贈ってきてくれるのね。別にこの方が買ってくれてるわけじゃない(笑)。
だけどいっしょにいれば、わたしより若いから、わたしの知らないことを知ってるし、仕事になれば、めんどくさいこと全部やってくれる。そこはありがたい話よ。

編た

与え合うものが違うだけで、与え合ってることには変わりはないってことかぁ。

内海

たとえ小さな家庭でも、持ち場も役割も人それぞれ違っていいってことですよ。

編た

師匠は、一流の芸人さんなので「仕事」に困ったことは一度もない?

内海

そうね、われわれは芸があれば食っていける世界だから。仕事って、自分がいくら探し回ってもないときはないわけで、だから、会社を探すんじゃなくて、自分の手で仕事を生み出す、仕事をつくり出すことが肝心だと思います。
これまでは自分で何かどうしてもやりたいと思えば、あごで使ってもらえるところに頼みこんでも行けばよかった。ただ、今は全部機械がやってくれるから人手がいらないわよね。
切羽詰まってえいっと飛び込める仕事場がほとんどないから、自殺者が多いんですよ。それでもね、ほんとにやる気があれば、身を落として、腹くくって、イチから出直せばいいのよ。でも、今の人はその腹がくくれない。

編た

師匠たちの時代に比べて、人間関係もそうだし、仕事、人生に対しても、何かこう肉迫したつながりみたいなものが薄れているような気がします。

内海

ケンカすればいいのよ。言葉が通じてないんです。昔はね、子ども同士も大人同士もみんなそこら中でケンカしてたわよ。言葉でケンカするから、いつかわかるわけよ、腹の中が。夫婦もそうですよ。ケンカするなら、とことんすればいいんです。うちだって、向こう三軒両隣に聞こえるように大声でやる。でも、ここが肝心でね。本気でケンカするときは、逆に片目つぶっとくの。その余裕は絶対に必要。

編た

師匠はこうして旦那さんもいて、名字がみんな違うとは言え、子どもさんも2人いらっしゃる(苦笑)。師匠の思う「女の幸せ」って何なんでしょう?

内海

男からもらったひと滴で子どもを産んで、育てる。そこが女の偉さよ。

一同

ひとしずくって・・・(笑)。

編た

国をつくるのは男、男をつくるのは女。山本五十六元帥の名言ですね(笑)。

内海

不甲斐ない総理が出てくるのも、みんな女からなの。時が時代を、時代が人を、つくり損ねた2000年ってね。

編た

子どもを産んで育てること自体が、個人の幸福とはまた別の意義を持っていたわけですよね。お国のため、人様のために役立つ人間を生み育てるのが、人としての使命と責任だった。「お国のため」というと「戦争のため」みたいに聞こえるのが日本の歯痒さだったりしますが、それって実は、後生のため、後の世のために今を生きるという意味じゃないのかと、思ったりします。

内海

戦争で痛い目にあったもんだから、日本人の腰が抜けちゃったのよ。昔はじいさん、ばあさんになっても、死ぬまで役に立ったものよ。それが近頃の年寄りは自分たちの楽しみや遊ぶことしか考えない。

編た

今まで一生懸命働いてきた分、これからは自分のために生きるとか。

内海

そうそう。いきなり山に登って、ヘリコプターで探させたりね。だいたい山に何があるんだって。迷惑だってたくさんあるのよ。そういうことに気がつかない年寄りはおかしいっていうの。

一同


撮影/木村 綾
005 漫才協会名誉会長 内海桂子さん Interview
第1回 自分の幸せなんか考えたこともない。 2011年1月16日 更新
第2回 離れたら終わり、漫才コンビの絆。 2011年1月22日 更新
第3回 恋も仕事も人生も、女は甲斐性! 2011年1月29日 更新
第4回 人の役に立ってこそ、生き甲斐がある。 2011年2月5日 更新

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漫才協会名誉会長 内海桂子さん スペシャルインタビュー (第3回)





うつみ・けいこ

1922年生まれ。東京都出身。1938年高砂屋とし松とコンビで浅草橋館に漫才初出演。1950年内海好江とコンビ「内海桂子・好江」結成。58年「NHK漫才コンクール」優勝。その後、82年に漫才としては初の栄誉である「芸術選奨 文部大臣賞」を受賞するなど、数々の賞を受ける。1998年に漫才協団会長に就任。2005年社団法人漫才協会会長に就任、その後名誉会長に。漫才活動のほか、映画、ドラマ、バラエティ番組などに出演。また絵画個展等を開催するなど、幅広く第一線にて活躍中。

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