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セラピューティック・トレーナー 白石鍼灸治療院 白石宏さんインタビュー (第1回)

【第1回】 身体の痛みは、心が発するメッセージ

強く明るくほがらかにわが道を行く道草スペシャリストにインタビューする「知になるピープル」。第2回目は多くのトップアスリートの記録に貢献し、その実績から「ゴッドハンド」とも称されているセラピューティック・トレーナーの白石宏さんにご登場いただきました。
痛みの元にあるものは? 次元を超えた治療とは?全4回に渡り連載します。
編集部
魚見
(以下 編う)

有名な例をあげると、海外ではカール・ルイス、ジョン・マッケーンロー、国内では有森裕子さん、伊達公子さん、北島康介さんなど、数多くのトップアスリートをサポートされてきた先生ですが、治療にあたるきっかけは、やはり選手同士の口コミですか?

白石

そうですね。僕の治療でよくなった選手が、同じように苦しむ選手に僕を紹介してくれて。実にありがたことです(笑)

編う

たとえばアメリカの超VIPな選手が治療を受けたいとなると、わざわざ日本に来られるんですか?

白石

来てくれたらいいのに、そこはやっぱり相手が相手だけに
おいそれとは来てくれない(笑)。「お呼びでしょうか?」と飛行機で駆けつける感じです。

編う

メインで行う治療は、鍼?

白石

鍼と、メンタル的な治療もします。具体的には最近は、「気」を使います。フィジカルな「痛み」の原因をよくよく探っていくと、どうしてもメンタルな部分に行き着くわけです。身体に感じる痛みは、その人間の心が発するメッセージ。だから、その人間がいちばん苦しいところを開放してやらんと、同じ痛みの繰り返し。僕は肉体と精神はひとつだと思ってます。
身体だけを治して良くなるなんてことはまずない。
考え方、気持ちの持ち方、生き方、精神の根っこを変えんことには、痛みからはどうやっても逃げられない。

編集部多川(以下・編た)

その苦しさというのは、やはりプレッシャーからくるのですか?

白石

そりゃもう、絶対勝たねば、記録を出さねば許されない。
想像を絶する過酷なプレッシャーですよ。でもね、それがどうしてキツイかというと、勝つことだけを考えているからなんですよ。それだけだと頑張るにも限界がある。そうでなくて、人を喜ばすこと、楽しませることを目標にすればいくらでも頑張れるし、自分も楽になるんですよ。不思議だけど、人間というのはみんなのためになるように、そんな風にできとるわけです。

白石宏さんインタビュー
編た

トップアスリートともなると、そういうメンタルコントロールがあたりまえにできているものだと思っていましたが、どんなに一流と言われる人でも、自分に自分が押しつぶされてしまうことがあるんですね。

白石

スポーツ界で一流といわれる人ほど、自分を開放するのが難しい。なぜかというと四六時中、カメラに追いかけられ、世間の眼にさらされているわけでしょ。つねに人目を気にした生活なわけですよ。しかもゴシップ記事になればあることないこと、書かれる。そういう状況に置かれたら、人間、誰も信じられなくなる。

編た

人間不信。完全に閉じた状態。

白石

ある有名な黒人シンガーは、100人の親戚に金銭的に頼られていました。成功して有名になってお金がある、となると親戚を名乗る人間が次々と「お金をくれ」と群がってくるわけです。そういう直接たかってくる人間だけでなく、ビジネスに利用してお金を儲けようという人など、欲を持って近づいてくる人間しかまわりにいなくなる。10年前に出会った頃の彼は、本当に孤独だったんじゃないかな。

編た

昭和のスターもけっこう、そんな感じでしたよね。親戚縁者の生活費を全部払わされていた大女優とか。プロダクションの社長やマネージャーに多額の借金を負わされた演歌歌手とか(苦笑)

白石

華やかなスターの世界には、そういう裏もあるんですよ。
だから、「あなたたちはそういう世界に生きていて、人に夢を与える使命があるんだ」という自覚を持たせることから、始めるわけです。忘れかけていた自分の使命を再発見するところがスタート。あるいはリ・スタートです。

編う

カウンセリングみたいなことですか?

白石

僕はインドで修行して、仏教やヒンズー教、キリスト教の勉強をしました。あとは、瞑想・メディテーション。そういう精神を解き放つトレーニングを一緒に続けるうちに、痛みを感じなくなるんです。だから「痛み」の元は心にあるという感じが、僕はするんですけどね。

白石宏さんインタビュー


撮影/岡崎健志
002 セラピューティック・トレーナー 白石宏さん Interview
第1回 身体の痛みは、心が発するメッセージ 2010年10月10日 更新
第2回 次元を超えた? 治療㊙エピソード。 2010年10月17日 更新
第3回 ケガや病気には必ず意味がある 2010年10月24日 更新
第4回 人間の強さとは、続けること。 2010年10月31日 更新

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1件のコメント

[...] http://salitote.jp/people/interview002-1.html > 有名な例をあげると、海外ではカール・ルイス、ジョン・マッケーンロー、 > 国内では有森裕子さん、伊達公子さん、北島康介さんなど、数多 [...]

by まと速 スポーツ - 2014/05/13 10:08 PM

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セラピューティック・トレーナー 白石鍼灸治療院 白石宏さんインタビュー (第1回)





しらいし・ひろし

1956年5月20日山口県生まれの広島市育ち。S,T,I 白石鍼灸治療院代表。
日本体育大学在学中からアメリカUCLAほかでトレーナー修行、日本体育大学陸上部内にスチューデント・トレーナー制度を創設する。卒業後は鍼灸師資格を 取得し、アメリカのトレーナー科学と鍼灸・マッサージを融合した独自の技術で定評を得る。米NFLスーパー・ボウルに臨むシカゴ・ベアーズの治療にあたり、優勝に貢献したことは現地でも「伝説」になっている。これまでに、有森裕子、カールルイス、清原和博など多様なジャンルでのアスリートの治療を行い、 競技生活のサポートをし続けている。また、西洋医学と東洋医学の融合を現場で推進する統合医療に取り組み、「セラピューティック・トレーナー」として、新たな道を拓いている。アーキュパンチャーオブザイヤーUSA'85(1985年度アメリカNo.1針灸師)受賞。

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