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編集部 多川 (以下 編た) |
鍼灸を始めたのは、何かきっかけが?
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白石 |
瀬古元マラソン選手の治療を担当したとき、アイシング、ストレッチ、マッサージなど何をやっても治らないんですよ。その当時、僕はナイキの陸上部に所属していて、そのときの監督は鍼治療がすごく好きで、監督から全盲のすごい鍼の先生を紹介されたんです。瀬古選手は、その先生の鍼を受けて、半年後に見事東京国際マラソンで優勝したんです。自分にとっては驚異でした。いったいどうやって治したんだろうと。
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編集部 魚見 (以下 編う) |
それでその先生という方に師事されたんですか?
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白石 |
いや、先生に弟子にしてほしいと言えなかった。それからずっと先生の真似をして目隠しをして練習したんです。目隠しで生活して、見えない感覚を養った。この話はマンガにもなりましたけど(苦笑)
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編う |
ほんとマンガみたいですね。で、その感覚はつかめたんですか?
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白石 |
いや、そんな簡単なものではなく、全然わからんかった。その頃の屈辱といったら。自分の鍼の腕などまったく信用されなくて。選手たちに鍼を打たせてほしいと、陸上部の監督にお願いすると打たしてはくれるんですよ。でもその後、選手に向かって「あとで必ず先生のところにいけよ」ってね。くぅぅぅーーーーって唸るほど悔しかった。その頃は。
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編た |
でも、あきらめきれなかった。
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白石 |
そう。こうなったら見て盗むしかないと。「治療費はオレが払うから」と、ボロボロの自分の車に選手を乗せて東京から群馬の先生のところへ通い詰めた。そのあと選手相手に治療するんだけど、でもダメ。全然わからん。いくら先生と同じようにやっても刺激がない、響かないってね。
ところがあるとき、いつものように鍼を打ってると先生の影が消えて、自分の世界に入れた。針の先が何かに当たったような手応えを感じた。0.16ミリの奇跡。で、どうだったと聞くと「先生とは全然違う。けど、すごい効いた」って。「ええ〜〜っ!」とビックリですよ。そこからまあ独自の鍼ができてきた感じです。
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編う |
それからインドやハワイへ向かったのはどうしてなんですか?
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白石 |
世界的な超能力・オカルトブームもあってか、当時、余命宣告されたガン患者や不治の病に苦しむ人たち、とくにお金のある有名人や企業経営者などの間でも「インドへ行けば治る」みたいなことが囁かれたりして。実際、そういうケースを僕自身も見たり聞いたりしていたから、本当かどうか確かめに指導者に会いに行こうと。といってもそう簡単には会えるはずがない(笑)。ところがインドの避暑地で指導者に遭遇して、告げられたんです。
「お前に人を治す力を与えてやる」って。その言葉をそのまま信じちゃって。それから8年間、インドで修行を重ねたわけです。
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編う |
インドに8年間、住み続けて修行をしたのですか?
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白石 |
いえ、インドと日本を行ったり来たり。修行は指導者のもとで、おもに瞑想とそして、師との対話を続ける、というものでした。
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編う |
インドで修行した後、ハワイ?
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白石 |
そう、ハワイは僕の女房が好きで、ハワイから帰ってくるたびエネルギーというかパワーというか、なんかえらい「パワーアップしているな」と(笑)。
それで不思議に思って僕も行ったら、ほんとに花開いちゃって。
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編う |
わたしもハワイに初めて行ったとき、ぱっと何かが変わりました(笑)。
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白石 |
ハワイはね、自然も人も何もかもすべてがオープン。インドは深淵ではあるけれど、どうも暗い。ひたすら瞑想して経を唱える。それが修行なんだけど、どこかこう、内へ内へぎゅーっと引きこもる感じ。
ところがハワイは、こう、ぱーっと全開。カースト(階級)なんかなく、みんな平等。だから、持つ力がどんどん外へ出せると気づきました。
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編う |
治す、治るために、先生が一番大事だと思うことは何ですか?
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白石 |
執着心を持たない。執着心を捨てる。病気ってね、執着のひとつのあらわれだと思うんですよ。仏教でもキリスト教でも、真実の悟りは執着を捨てるということ。自分が何にこだわり、何に執着していたのか。その「自覚」に至る道筋をサポートすれば、滞ることなく、正しく「気」を流すことができる。それが、僕の考える治療なんです。
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編た |
人や物に対するだけでなく、自分の知識、経験、過去という自分自身に対する執着はなかなかわからないし、気づけない。
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白石 |
その道で一生懸命努力して成功した人、名誉ある地位に上りつめた人は頑固一徹できてますから、そういう人が重たい病気やガンになると、初めて「家族の大切さ」に気づく。でもね、家庭や家族を顧みず突っ走ってきたからこその成功でもある。僕なんかから見ると「なんで、そこまで見えなくなるんだろう」と。でもあたりまえのことが見えなくなるほど、それほど集中力がすごいということなんですよね。
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編う |
病気は、執着していた自分を知って、そこから新しい自分になるきっかけでもある?
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白石 |
ケガや病気には、必ず意味がある。ぼくは患者さんにも言います。「こうなったのは、誰のせいでもない。あなたの頑固さがそうさせたんです」って。本人にしたら認めたくない、ただでさえ苦しいところになんでそんなこと言うんだ!と怒鳴りたくなるようなことを言います。でもそれをキャッチした人は必ずよくなります。
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編た |
はねつけた人は、治らない?
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白石 |
いや、治らないのではなく、「そのとき」ではないというだけ。僕は絶対にあきらめませんから。その人の「そのとき」がくるまで待ち続ける。あきらめず、ずっとね。
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