五味さん(以下五味)
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ところで、今日のテーマはなに?
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魚見 |
自由です。自由に生きるとは、どういうことか?
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五味 |
ないよー。自由に生きるなんて、ありえない。
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魚見 |
ありえないですか?
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五味 |
生きてることは不自由でしょ。俺なんて体力がなくなってきたから、引力がきつくて。「あらがって」って言葉があるじゃない。みんな、あらがって生きてるんだと思う。生きてるってそういうことだと思う。安心、安定は死んでから。
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イシコさん(以下イシコ) |
僕もそう思います。「絶対」とか「永遠」っていうのはないと思ってて。
僕がなにかしようとすると、「絶対、無理」って言われるんで。
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五味 |
それは、いいすぎでしょってね。
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イシコ |
まあ、無理な可能性は高いんですけど。
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五味 |
自由なんて味わったことないし、いつも不自由だよね。でも、違和感っていうのかな、それにはわりと敏感な気がする。違和感があると、それをなんとかしなくちゃって思うじゃない。その修正みたいなのだけが、努力の方向だった気がする。それについてはよくやってるなと思うよ。
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イシコ |
違和感があるときに、何か言ったりすることはあるんですか?
例えば、プロジェクトをやっていて違和感があったら、どんな場所でも「自分は違和感がある」っておっしゃるんですか?
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五味 |
ゆえに、プロジェクトをしなくなったんだよね。
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イシコ |
あーーー、わかる。
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五味 |
できなくなってきたの。“運動”もしなくなった。若いときに、たまたま新宿で成田闘争*をやっているおばちゃんに会って、その人の話を聞いたら「それは不合理だよね」って話で。俺たちになにができるかというと、お金が足りないっていうんで、仲間と金を送ってたの。それが俺の成田闘争なんだけど。そういうこともしなくなったのは、あるものはこっちはいいよね、それは反対だって言っても、最終的には趣味の世界の話なんだよね。原発も迷惑するし、反原発でも迷惑するやつもいるわけ。さらにいうと、俺の意見は関係ないんだよ。だって、新幹線が通りますよって、相談なかったよね。イシコのところに相談ないよな?
*成田国際空港建設に反対する闘争のこと。三里塚闘争とも呼ばれる。
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イシコ |
ないですね(笑)。
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五味 |
ただ、あてがいぶちで、その中を選択しながら生きているだけなんだよね。
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イシコ |
「僕には守るべき家族があります。自由にはできないんです。あなたは子供がいないから自由にできるのではないですか?」
と質問されたことがあるんです。僕は、その時「僕は自由だと思ったことはありません。唯一、自由だと思っているのは「選択」です。お子さんを持つということは、その人生を選択したということなんじゃないんですかね。それは僕には得られない幸せを持っていらっしゃるんだと思います。でも、それが不満だったら、極端な話ですが、奥様と離婚し、子供も奥様に任せるという選択もできるんです。倫理とか道徳とかの話は別にして。でも、その選択をしたら、違う自由じゃないことが待っていると思います」って答えたのを思い出しました。
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五味 |
この社会に生きるしかないんだよね。
あ、俺ねアフリカに行ったのよ。観光のアフリカ、ケニアですけど。イシコは内戦とかしてる、ごっついアフリカ行ってるけどね。
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イシコ |
いえいえ。
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五味 |
動物がいるところはさ、自由に歩いちゃいけないから、車に乗っていくんだけど、車から降りちゃいけないわけ。なぜかドライバーが「ミスターミスター」って、バックミラーで注意するんだよね。写真撮ってるだけなんだけどさ、降りそうな顔してるのか(笑)。
それで、1回エンジンを止めてくれて、シーンとなったの。すごい静かだと思ったら、近くでバリバリってなんかが動いて、遠くにゾウやキリンやバッファローがいて。
アフリカではアフリカのルールがあって、車に乗って観るだけ。その道しか通っちゃいけないし、動物にアクションをかけちゃいけない。そういうルールの中、サイが横切ったり、ゾウが通ったり。それで、スコールがどっと降ったり。その環境のなかでなんとか生きてる。
東京に帰ってみて、ああ、そうか、ここも同じなんだって思ったの。
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魚見 |
同じ?
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五味 |
サイの代わりに、お巡りが出るんだよ。だからスピード違反を捕まえているところは、早く察知してスピードを落としてそっと走る。仕事やってると、税金払えっていわれて、税金を払う。アフリカの公園もよく考えたら、入場料を払ってるわけ。そこにはそこのルールがあって、逃げながら生きるしかないんだって感じなの。
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魚見 |
はい。
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五味 |
アフリカのレンジャーは、敏感にいろんなことを考えながら運転してるよね。ゾウの大群がこう動くって経験でわかるから、横切るまではかなり距離をもって待ってる。でも、チーターとか狩りをしたあとだったら、結構近づいてもやつらが動かないことを知ってたりね。そういうのって、六本木にいけば、こういうのがいるよね、とか知恵があるじゃない。それと同じだなと思って。自分の実力だと、たぶんアフリカで生き延びられないと思うんだよね。マサイ族とか、ホテルのショーで踊ってくれたりするけど、近くでみるとすごい傷があったりして、ハンパじゃないよね。
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魚見 |
渋谷のスクランブル交差点も自然環境だって思ってみると、なんかおもしろいですね。
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五味 |
ゾウも、税金も、仕掛けにはまってしまったことかもしれないけど、それこそ、先にゾウがいるんだもん。税法があるようなところにいる。その恩恵もどっかであるとしか考えようがないじゃない。さっきのマーケットの話で、出版のマーケットがここにあるから、アフリカよりここが暮らしいいかなってね、実に壮大な考え方が出てきたわけですよ。わりとそれ以降、おだやかよ、俺。
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イシコ |
日本が嫌で、アフリカに住みますって選択だってできますよね。それを選んだら様々な障害はあるけど、能動的に選択したことだから向き合っていける。実際、そうやってアフリカに住んじゃった人を数名知っています。
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五味 |
そうだ、イシコのお友達に会ったんだよ。
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イシコ |
あすかちゃん?
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五味 |
そう!
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イシコ |
え!
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陽子さん |
イシコさんに紹介してもらったんですよ。
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イシコ |
あれ、そうでしたっけ?
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五味 |
スズキのジムニーに乗って、ひとりで何十キロも走ってきてくれたの。おしゃれな人だよね。まあ、楽しんでってくださいって軽く言われて、軽く去って行った。かっこいいよね。
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イシコ |
マサイ語もペラペラですからね。
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五味 |
彼女にしてみれば、あそこの環境がもってこいなんだよね。彼女の自意識みたいなやつと。そういうところを選んで生きていくっていう形でしかないから。だから例えば、日本の環境がよくないっていうんだったら、出ればいいっていう選択をもっていれば、クレームをつける必要がないよね。その選択をはじめからする気がないのに、文句つけてる。
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イシコ |
「こういう理由があるから、これしかできない」という消去法的な選択をするから文句が多くなり、人のせいにしたりして、どんどんスパイラルに陥って抜け出せなくなってしまっているのかなと思いますね。
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五味 |
学校を辞める気がないのに、学校はよくないっていったりね。だったら辞めたらいいのに、っていうのは、ま、余計なお世話なんだけどさ。
今度小学校に講演しに行くんだけど、同じことを言うだろうね。『勉強しなければだいじょうぶ』って本を陽子ちゃんと作ったの。朝日新聞の出版局で出したらまじめに売らないから、ちょっと営業しないとってことになって。8月に、集文社ってとこから出し直す。
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イシコ |
え、今度の本、朝日新聞出版局なんです。
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五味 |
自分でがんばらないと、すぐ絶版になっちゃうよ。
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イシコ |
がんばろう。
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1件のコメント
昔の人も「遊びをせんとや生まれけん」と言ってるし、”自分の人生は自分の物”だから、自分が納得できる生き方、楽しめる人生が良いじゃん、と思う
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