編う |
色んな人間の修羅場や本性を見てきた監督ですが、そんな監督でも見抜けないことや騙されることもあるんですか?
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村西 |
もちろん、ありますよ。ある日、若いお嬢さんがAVに出たいとやってきて、聞いたら21歳だと。それはそれはとホイホイ撮ったわけです。で、2カ月ぐらい経った頃に、そのお嬢さんがお姉さんを連れて来て、身分証明書を出して「妹はまだ17歳です。お小遣い欲しさに出演してしまいました」と、こう仰る。そんなこと今頃言われてもと弱った顔を見せた瞬間、そのヤリ手なお姉さんが示談にしませんかと。それでその姉妹に5百万渡して、このことは3人のヒミツにしましょうと、念書まで書いて一件落着。と、思いきや2カ月後、警視庁が来て捕まりました。たぶん、そのお姉さんのバックに、業界に詳しい男がいて、妹をダシに村西から巻き上げてやれと、そういう話だったんじゃないでしょうか。
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編た |
監督はそうやっていつも人に裏切られたり騙されたりしても、人間はそういうもんだと、その人を責めたり憎んだりしないじゃないですか。コイツだけは許せないとか、そういう感情にはならないんですか?
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村西 |
まったくならないです。だって自分がその相手の立場で自分と関わったときに、どうするか、どう思うかなんてわからないでしょう。そういうもんだと納得するよりほかしょうがない(苦笑)。たとえば借金で自殺する人もいるけど、もし、自分が貸す側で、10万でも20万でも他人に貸したら、寝ないで追いかけ回すでしょうに。そのくせ、借りたとなれば「つらい」とか「ひどい」とか、自分のことばっかりなのはいかがなものかと。貸した方がよっぽどつらいこともあるんですよ。
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編た |
「貸した者と借りた者」を「持っている者と持っていない者」に言いかえると、守られるべきは「持っていない者」で、そちらの主張が無条件に正当化されることが社会正義のあり方かとも・・・。ただそこで弱者が弱者であることを主張するのは、これまたちょっと違うんじゃないかと自分も反感を覚えることがあります。
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村西 |
たとえ弱者であっても相手の立場に立って考えることは必要じゃないでしょうか。自分が100万でも人に貸して、もし返してもらえず踏み倒されたら、一生恨んで許さないでしょ? 貸した方にも気持ちはあるということです。
よく会社が倒産して何千万の借金抱えて、人生お終いですと僕のところに相談にくる人がいますが、そう言う人にわたしはいつも尋ねます。「あなたの借金はおいくらですか? わたしは50億です」「あなたは前科がありますか? わたしは前科七犯です」「あなたは妻とのセックスを世間に公開していますか? わたしは自身のペニスはもちろん、それにむしゃぶりついている女房の姿に至るまで、すべてを日本全国の皆さまにお目にかけご提供した上での倒産です」。すると、悲壮感に打ちひしがれて今にも死にそうだった人が、なぜか生きる気力を取り戻し「俺の方がまだマシだ」と胸を張って、元気になって帰って行かれるわけです。
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編た |
下には下がいると(笑)。監督は「下にはおれがいるぞ」と、「おまえたちは全然マシだそ」と自ら体を張って、人生賭けて、サービスしてくれているわけですね・・・。
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村西 |
自分なんてまだまだ大丈夫と思っていただけるような「下」、あるいは「底」には必ずや村西がいる。そんな風に喜んでもらえることが自分の存在価値だと、客観的に見て、そこは承知しておりますから。世間に名が通っている有名人や金持ちは運がいいだけなんです。自分の能力だけで稼げたとか、有名になったということは99%ありません。だから世の中に出ている運のいい人たちは何をしなければいけないか。それは、「元気」や「頑張り」みたいな、人にエネルギーを与える何かを出し続けなければいけません。それはひとえに世の中の皆さまに対するご恩返しでしょ。そういうわけで私の場合は、下へ下へというわけです。
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編う |
大変失礼な質問で恐縮ですが、監督って落ち込むこととかあるんですか?
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村西 |
もちろんありますとも。わたしなど何千回も死にたいと思って生きてきた人間でございます。別に死にたくない時にも、死んでくれと言われた時もありました。街を歩いていたらいきなり車に乗せられて、高速道路でビューンと辿り着いたら、どこかの山奥のダムです。そして「ここから飛び降りてくれ」と。あんたを殺したら、おれが殺人になるから、あんたが飛び降りてくれと。そんなこんな、わけもわからず落ち込むことばかりの毎日です。
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編た |
50億の借金を抱えて生活が一変したとき、監督の奥さんは別れるとかそういうのはなかったんですか?
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村西 |
彼女は私がいちばん稼いでいた絶頂期、全盛期をずっと見ていたから、いずれこの人は再起するだろう、このままで終わるはずがないという思いがあったのかもしれません。もしくは、この人のことだからどこかに隠し金があるだろうと、そういう確信があったんじゃないでしょうか。その頃は、マンションの家賃も半年近く滞納していたんです。ある日、子どもを幼稚園に連れて行こうと玄関を出ると、大家さんに「家賃も払わないで、どういうつもりなんだ!」と鬼のような形相で罵倒されました。「ごめんなさい、ごめんなさい」と土下座して泣いて謝る女房、何も分からず母親の背中にじゃれついている小さな息子。僕はそんな2人の横で、うすらバカのようにただ立っていただけでした。そのとき、これはもうどうにもならないと覚悟しました。女房に「もうどうにもならない。昔の村西とおるじゃないよ」と、一文無しのスッテンテンの男になったことを告白したんです。
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編た |
奥さんも奥さんでそのとき何か覚悟を決めたのかもしれないですね。
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村西 |
その当時、わたしは家庭にお金を入れていませんでした。入れられなかったんです。というのも、家にお金を振り込むと家族に取り立てが及ぶわけです。「おまえの女房に払ってもらうぞ」みたいなことになるのが一番怖かった。でもここまできたらもうそんな格好付けたことは言ってられません。わたしは女房に言いました。「これからは家賃を溜めることもしないし、生活に必要なお金はちゃんと入れる。その代わり借金取りがくるよ。電話で脅されるだろうし、人間がすることとは思えないようなことをされるかもしれない。それを耐えてくれるかと。すると女房は言いました。「わたしは運命に逆らわない生き方をしているから大丈夫です」と。
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編う |
すごいですね、奥さん。
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村西 |
すごいというか何というか、彼女は彼女でちょっと変わった根性の持ち主なんです。デパートでトイレが混んでいると急に足をひきずって、障害者のトイレ入り、出てきたときにはさっきと逆の足をひきずりながら出てくるような人なんです。ホテルに引きずり込んだときも「そんなことするわけにはいかない!」と、ホテルの植え込みの観葉植物を4、5本倒して、引っこ抜いて「いやだ、いやだ」とギャーギャー嫌がり拒んだ翌朝。ふと彼女を見ると、ちゃんと着替えのパンツや歯ブラシを持ってきている。じゃあ、昨夜のあの立ち回りは一体何だったのかと。そういう理解しがたい部分が彼女には大いにあります。
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編た |
笑・・・それは、わかるようなわからないような、、、。まあ、言ってることとやってることが違うみたいなことは、自分もよくありますが。
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村西 |
女房に「おまえはほんとに嘘つきな女だな」って言ったら、あらそうかしらと。あなた私に「前科2〜3犯だ」って言ったわよね。でもほんとは7犯だったじゃない? しかも「カメラテストだから」って、中出しまでしたのは誰?「家持ち」みたいなこと言って見たら、何よ!あのボロボロのあばら屋。嘘つきはいったいどっちなのよ! とものすごい剣幕でまくしたてられました。それからは二度と決して女房に口答えはしません。家にいるときも何かにつけて「ありがとうございます」と、その辺のコンビニの店員より礼儀正しく接しております。
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編た |
ご家庭でも、その丁寧なことばづかいなんですか?
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村西 |
はい。そういう礼儀作法は怠りません。女房とのオマ○コの後も「ありがとうございます」と。そして最近は感謝の後に「申し訳ございません」の謝罪を追加しています。「ありがとうございます!申し訳ございません!」大体そういう感じです。
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