2015-11-5
流されるままに絵馬を
たのしいなー、えへへ。と、無意識のうちに指がタイプしたのだからおどろいた。とくになにか楽しいできごとがあったわけではない。タイプされた文字を見て、「あ、ほんとだ、いま、楽しい気持ちだ」と知ったくらいだ。気分って変幻自在なんだなあ、水みたい、流れるみたい。ついさっきまで、こがらしの音にきたる寒さを想像し「やはり今年も冬を受け入れるほかない」と心をなまりにしてたつもりが、いまのこの軽さ、ポップな感じときたら。こういう気持ちって、どこからきて、どこへ流れていくのでしょうか。
突然ですが、せんだってわたしはフェイスブックで結婚宣言をした。相手はこれから見つかれ。きっかけは、世にいう福山ロスだ。ファンてほどでもなかったのに、それに見舞われた。お見舞いされた。「見とどけた」というやり切った感のようなものがわいてきて、自分のなかでひとつの時代が終わったことを受け入れると、私は決めた、そっか、わたしも結婚しよーって。さらに、結婚宣言したことをここで書いてみよーって思いついた。理由がある。やぶからぼうだけど、それは、このコラムが、夢の叶う場所かもしれないからだ(※1)。というのは、ここで「やすらかに生きたい」って言ったら、わたし、やすらかになっちゃったようなのだ。 連載開始早々に企画時のテーマと矛盾してやすらかになるといううっかり具合、これも受け入れてもらえると信じて、書き進める。
コラムを書くとなったとき、ここはただ私がつれづれの思いを叫ぶ場所にさせていただこうというつもりでいた。タイトルは、自分の口からふと出てきたもので、でも、考えてみたら、それは、あらためて言葉にしたことはなかったけれど、未完のあの夢この夢の根っこにある思いだった。それを表にだせるだけでよいと思って作文した第一回が掲載されてしばらくしてから、あれ?へんだな?と。自分のなかにキリキリした切実さがない。いつもの飢えてる感が、よわい。叫びたい衝動のようなものが見当たらないみたいなんですけど??と、なった。
もうすこし言葉を足してどういう気分かというと、たとえば、んーと、終電から降りてごったがえした駅のホームのエスカレーターで、酔っ払いのサラリーマンに、「お先にどうぞ」と先をゆずるときのような気持ち。あるいは、「え、わたしですか、わたしはAB型です」と言ったあとに相手の反応をさきばしらず怖がらずに受け止めることができたときのようなおだやかさ。そういう状態がつづいているのです。これって、やすらぎでしょ? だって、あれですよ、いまわたし、冒頭にも書いたように、たのしいなー、えへへ、と、勝手に指が動くようなありさまですよ。ここんとこの私にいろんな思いをもたらしてくれていた中年クライシスや中2病(※2)を卒業しちゃったのかもしれない。パンク風味も薄くなった気がするし、もう、コラムのタイトルは「やすらかに生きた」に変更しようか。
さて、やすらかになってみてわかったことがある。わたしの、やすらかに生きたいという思いはホンモノだ。こないだまでは、ひょっとするとただのないものねだりで、手に入れたら気が済んでしまうひやかし程度のものかもしれないという懸念が、実はあった。しかし、いま、わたしはやすらぎのかけらを感じてみて、これ、好きだなと、もっとほしいなと、飢えからではなく思っている。うっかりひたっちゃってるやすらぎ、どこからともなく流れてくる楽しい気分、そういうのを育てて、質をそこなうことなくどなたかにお渡しできたらなんて素敵だろう。
はい、話を戻します。やすらかに生きたい!と言ってみたら、やすらかになっちゃった!というこの状況を受け、わたしは思ったわけです、実験的にここへ夢や願い事を書いて、絵馬みたいなつもりで納めてみてらどうか、と。コラム「やすらかに生きたい」はsalitote神社の絵馬になります!編集長に、いま報告。そんなわけで、最初の実験にみずから献体し、今月は「結婚」と絵馬に書いてみようと思ったのでした。
「しあわせな結婚生活を楽しんでいるわたしであることよ!」
これにて、絵馬の奉納を完了します。進捗あれば、都度報告したいと思います。絵馬、納めたい方がいたらお知らせくださいね。
よし、大仕事をひとつおえたところで、こないだ思ったことを書いておきたい。こっちが本題のはずなんだけど、余談みたいになってしまうな。もはや、ただのメモのようだ。なんたるやすらかさ。老後って、こんな感じなのかな。うっとりする。
でも、あれですね、もうすっかり長くなっちゃいましたね、その話は次回にしましょう。
今日のBGMは「里の秋」でお送りしました。では、また。
『ああ かあさんとただ二人 栗の実にてます いろりばた』(1948年 作詞:斎藤信夫、作曲:海沼実)
※1:ここ、何度読み直しても大きく出すぎててヒヤッとする。そういう部分ですので、お読みの方におかれましても、安心してヒヤッとしていただきたい。
※2:中二病については相当こつこつやってきた。わたしの背番号は永久欠番にしてほしいくらいだ。
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