salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

気になる映画で「恋愛」を考えテーゼ!

「もう立ち直れない。そう言いながら、
男も女も何度も恋を繰り返す」



凄く湿度の高い映画だった。
日本のいろんな「ジメジメ感」が詰まっている。
奈良の朝の美しい風景を包む朝霧、太古の石棺のなかの湿気とウマオイ、秘密の逢引、血、染色の音、神社、昔から変わらないことの重なり・連なり、戦時中の日常、過去の因果、ほとほとジメッていた。うわあ、湿気がまとわりつく、日本てこんな感じ…と。


とりわけ加夜子の湿度がとにかく高かった。
二人の男性との関係に悩んでいるので終止暗い。心から笑わないし、陰鬱な表情をするし、喋ってもぽそぽそ言う。そのくせ自分の弱さをアピールするような図太さもある。


このひとは結局どうしたかったのかなあ、と思う。

同居している男性に、他に好きなひとができたと告げ、その好きなひとには「妊娠した」と帰りしなにフワーっと言い逃げするが結局堕胎する。相手には「私の行動と言葉少なのこの態度の行間を読みなさいよ」というスタンスなのに、「あんたはいつも待ってるだけ」と罵倒する。二人の男性どちらに対しても、「私がこうしたことによってこの人は私にどういう行動を取ってくるのかしら」と反応を見ているとしか思えなかった。あるいは心配して欲しいキャラなのかもしれない。


同居人の男性とは結婚はしていなくて、いまどきの言い方をすると「パートナー」ってやつらしい。

二人の名字の表札が一軒家に付けられていた。加夜子は染織家でパートナーは地元誌の編集者か何かで、田舎で同居してしっかりそこで生活しているくらい、自分たちの生き方のオリジナリティに対するこだわりを持った個人主義の二人の筈なのに、「好きなひとができた」という事実はそういう彼等にとってそんなに重大なことなんだろうか。


そんな意味でも、「やっぱりこの女…試してるわね!」としか思えなかった。


で、も。
他人のこういうジメッた態度ややりとりを見せられると気持ち悪いなあと思うけど、大なり小なりこういうこと私もやってきたな、なんても思った。だから余計に気持ち悪かった。おおいやだいやだ、わかるわかる、みたいな、アンビバレンス的な共感。


THE HIGHLOWSも歌っていた。「もう立ち直れない。そう言いながら、男も女も何度も恋を繰り返す」。太古もいまも。

trapeze

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