salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

人生現場の金銭論

新年すっかり明けましておめでとうございます。
本年も皆さんと一緒に、あてどない思考の細道をずんずん掘り進んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお付き合いのほど。
ということで、さっそく新春1発目の「考えテーゼ」。お題はいきなりお金の話であります。世間一般の通念として、お金のことをとやかく言うのは下世話で下劣なことと言われます。わたしは大阪人なので、相手が素敵なモノを持っていれば「それっていくら?」とか、友だちのマンションにお邪魔すれば「わぁ広い、家賃いくらなん?」と、ぺろっといやらしく無邪気な質問をしてしまうのですが、そこは相手との距離に応じて臨機応変に踏み込んだり踏みとどまったりという具合です。
お金の話は、その人の秘めたる部分であり、どれほど親密な間柄においても、決して核心には触れることなく察し合うにとどめるのが人間関係の良識、世のしきたり、作法かと。しかもそれが借金やローンといった負債がらみの話になると尚のこと、とくに知っている人間だけには知られたくないのが、人が人である最後の砦のような気がします。つまり、お金に対する考え方、向き合い方、始末のつけ方は、人間の本性の現れでもあり、それは人間誰しもが持っている弱さ、狡さ、愚かさといえるのでは…。もちろん自分もそういう恥ずかしさを秘めた1人として、今回の考えテーゼ!は、人間とお金について考えあらためたいと思います。

まずは、人生お金じゃない! とはいえ、お金に揺れ惑う小さき心の人間5人のフリートークから。

●親の借金から学んだこと

今日は、とくにお金がらみの苦い過去をお持ちのみなさまにお集まりいただき、お金にまつわる苦労や忸怩たる思いを気取りなく、遠慮なくお話しいただければと。さっそくですが、わかりやすいお金の苦労といえば「借金」ですが、AさんとBさんは、親の借金という貴重な体験をお持ちだとか?
貴重かどうかはわからんけど、まあでも父の借金によってまざまざと見せつけられた部分は大きいから、人生勉強といえば貴重やったかも(苦笑)。
お父さんの借金というのは、事業の失敗とか?
いや、それが仕事でどうのこうのではなく、ひとえにお父さんの内面的な問題。もっと言えば、お父さんがそうせざるえない原因の一端はお母さん、わたし、お祖母ちゃんという自分たち家族にもあるように思う。たぶん、お父さんは仕事も家庭も人生すべてが面白くなかったんだろうと。会社のお金を使い込んだりして、それを補填するためにサラ金から借りてみたいなことを繰り返すうちに、あれよあれよと借金が増えて気づいたときには何千万。それで家も売ったし、退職金も失ったし。
博打とか浮気とか、他所に子どもができたとか、そういうはっきりとした理由があるわけじゃなく、日々の憂さ晴らしというか魔が差したというか、ついつい出来心でこさえた借金ってこと?
そう、ちょっとした出来心の積み重ね(苦笑)。借金という事実もショックだったけど、その理由がまったく見えないことの方がショックだった。とくに母はいまだに葛藤してると思う。お父さんに問い詰めても本人も口をつぐんだまま、そうやって自分の感情や内面的な問題を表に出すことができない生き方をしてきたから、父親本人もなぜこうなったのか、はっきりとはわかっていないんじゃないかな。
何に使ったとか、そういうことも一切だんまり?
そこも「これ!」という確たるものはなく、その時々で色々なんじゃないかな。その頃、パチンコにもよく行ってたし。でも、お母さんに時計を買ってきたり、家族が喜ぶお土産を買ってきてくれたりしてたから、きっとお母さんの気を引きたかった、寂しかったんじゃないかと。だからお父さんの借金の問題は、見えているのは「お金」だけど、その根っこにあるのは、お父さん自身の心の問題だと思う。2度も同じことを繰り返したから。
精神的なストレスが肌に出るみたいな感じで、お父さんの一番弱いところが表に出たのが「借金」だったと。
父の場合、そういう自分の弱さや孤独、本質的な心の問題に気づくのに何千万も払ったと、わたしはそう思ってるけどね。
はぁ~、でも、そう思うしかないよなぁ(笑) Bさんも同じく、親の借金を体験されたそうですが、いかがですか?
うちの場合は、親父が保証人になった人が行方不明になって(苦笑)。
おれが小学校3年くらいのときかなぁ。いきなり家の前に黒塗りの車が止まって、いかにもそれ風の取り立て屋がぞろぞろとやってきては「こらぁ金返せ!」と。だから毎晩、家の電気は消して、そいつらが来る度、そーっとラジカセを玄関に置いて録音するのがオレの役目。
しかも親父が保証人になったおじさんというのは、小さい頃からよく知ってて可愛がってもらってたから、子ども心には「借金」がどうというより、「あのおじさんが裏切った」ということの方がショックだったかも(苦笑)。
じゃあお父さん自身は、何の責任もなく、運が悪かっただけだよね。
それが、うちの親父は建築関係の設備士で、受注から支払いまで半年、1年かかるような仕事の請負構造上、借金せざる得ない状況だったりして。しかもこの不景気で発注元の不払いや倒産が相次いだりすると、自分も払ってもらってないのに、職人や業者たちには自分が借金して支払う自転車操業。
そんな親父は一昨年亡くなったんだけど、死ぬ間際まで、病院のベッドから抜け出して資金繰りに奔走していたから、そこまできたらもうそれが親父の生き方だったとしか…。借金に借金を重ねて、おかんや兄貴やオレたち家族がどんなに迷惑しても、職人たちの面倒は見るみたいな。二言目には「あいつら職人には生活があるから」って、自分や家族の生活はないんかっ!と。

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