「明日、この日々が終わるとしたら
命、焦がしても、あなたに逢いたかった」
これは『朱花の月』のキャッチコピー。
数年前のわたしなら、このことばにキュンと胸踊らせ、妄想をはないっぱいに膨らましてドキドキしながら映画館に向かったことだろう。
それが自分でもがっかりなことに、「そんなふうに思うこと、ほんとにあるんかな…」と斜に構えてしまった。
このところ、すっかり恋愛の神様に見放されてしまっているひがみ…だろう(苦笑)。
河瀨監督は前作の自然分娩を題材にしたドキュメンタリー映画
『玄牝〜げんぴん〜』に続き今回も自らが16ミリフィルムのカメラを廻した。
飛鳥の土、水、雨、風、月、山、川、草、木、炎、そして人…。映し出される映像には「作りました」感がない。その生々しさに自分の気持ちの置きどころがわからなくなる。
なんというか、「月9」的な、「ハリウッド」的なドラマであれば、自分とは関係なしに、「絵に描いたような」話に羨んだり、泣いたり、笑ったりして、「あースッキリした!」で終了するのに、そういうわけにはいかなくなった。
だんだん、腹が立ってきたのだ。
不安でさみしげな加夜子に。
儚げで、ずるくて強い加夜子に。
女である加夜子に。
私は、女であることに正直でいられる加夜子に嫉妬したのだ。
とはいえ、なにを、どうすればいいのか、よくわからない。
年を重ねるとますますわからなくなっている。
でも、底知れぬ強さと美しさを感じる自然の中に身をおいたときにあふれてくる気持ちに、もっとつながっていたい。
答えがわからないことを恐れずに。
魚見幸代
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