salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

白線の裡側まで

2010-09-19
連呼と確認、おもろい夫婦。

夫婦とは所詮、きつねとたぬきの化かし合い。
ああ、おもろきかな、おもろきかな夫婦・・・

40代以上の関西人なら懐かしく思い出されるこのナレーション。
夫婦対談番組「おもろい夫婦」のコンセプトコピーである。
司会はこれも昭和世代の方ならご存知、夫婦漫才の名コンビ、
くちびるお化け・京唄子、エロガッパ・鳳啓介、両師匠。

なぜかわたしは幼稚園の頃からこの番組が好きで、
ひと組の夫婦がテレビに出て、夫婦生活の内幕を
洗いざらい打ち明ける内容は同じでも
「新婚さんいらっしゃい!」の方 はそれほど興味が持てず
お昼を食べながらちらっと流し見る程度。
けれど「おもろい夫婦」 は、テレビの前に敷かれた
ふとんの上に三角座りでかぶりついて観ていた。
戦中・戦後の物のない貧しい時代、食うや食わず
働き通しの苦労を重ねようやくここまできた夫婦と、
「Yes!NO!まくら」に象徴される新婚さん、
どちらの話が腹にこたえる重みがあるか。
ガッチャマンのパジャマを着た子どもといえども
どちらがほんまにおもろいか、本物か本物でないか
の「違い」は何となくわかるのだ。
ですから、小さなお子さまをお持ちの親御さんは、
そういう本物に触れる機会をできるだけ与えて
あげてほしいと思うのです。(誰?)

と、話はそれたが、その「おもろい夫婦」の最初か最後に
「おもろきかな〜おもろきかな〜」のナレーションとともに
流れる映像があり、それが今でも強烈に印象に残っている。

でっぷり太った女房を荷台に載せたリヤカーを
亭主がへーこら引いてあぜ道を行く夫婦の姿。

亭主「押してるか〜?」
女房「押してるよ〜」
亭主「なんか重いぞ〜」
女房「気のせいやろ」

とか何とかのかけ合いがあったかどうか記憶が定かではないが、
そういうどっちもどっちのアホらしさが夫婦なのだと、
幼な心に植え付けられてしまった感がある。
そのせいか、自分にとっての夫婦の定義は、ただただおもろいこと。
愛情、セックス、子ども、家庭という夫婦にまつわる重要パーツは
「あったらいいな」のオプションで、それがなくとも
おもしろければすべて良し。愛はあってもおもろくなければ、
「わたしたち、終わりね」。というような極端に偏った価値観で、
その一点に全員(2人)集中! おかげで、それ以外ぱっとする
ところが何もないふたり生活を送る現在である。

で、そんな「おもろい夫婦@東京」とでもいおうか、
週末、近所のダイエーで必ず出くわす太った夫婦がいる。
この夫婦の何がおもろいのか。
それは、ふたりの会話がまったく噛み合っていないどころか、
会話にもなっていない。お互いの話は完全に一方通行。
なのに不思議と通じ合ってる不気味な交わり感。
そこが当人以外、誰も踏み込めない夫婦という名の秘境なのか。

そして本日も、お刺身パックの値札シールが「30%引き」から「半額」へ
今まさに貼り替えられんとするちょうどその時刻、夫婦の姿を発見。
というより、聞き覚えのあるその声に「まさか」と振り返ればヤツがいる!
いつも通りお決まりの「またか」の登場パターンである。
何しろその女房、「お刺身全品半額で〜す」と呼びかける魚のお兄さんの
声を合図に飛び出してきたラッパーのごとく、突拍子もなく、声がデカい。
ただ無駄に太っているわけではない声量が、これまた憎い。

さらに その女房、声の大きさにも増して、心に浮かんだフレーズを
何回も何回も連呼するのがまあ、うるさいの何のって。
「ハマチもひらめも半額、半額、半額だって!
半額半額って、ほら半額半額、ほら!」と、
亭主の名前が「半額」かというくらい、ひたすら連呼。
お刺身相手にやたら興奮気味の女房とはうらはらに、
亭主の方は何のつもりか「本日水揚げ、気仙沼港直送・・・」と
冷静に刺身のスペックを読み上げる。

まったく的外れな亭主にすかさず女房、
「なに?どこ?どうしたって?いいわよ、どうだって!
ほらこれも半額、半額だからお刺身でいいね、今日はね。
あとアレ、角煮があるからさ、角煮、ほら角煮よ角煮、
夕べ食べた角煮!角煮!」と、お次は「角煮」の連呼開始。

「角煮。昨日食べた角煮」と、女房の口から飛び出す言葉を
一語一語指さし確認、あたかも点検して回る亭主。
これはいったい、どういう会話方式なのか。

お魚からハム・お肉、たまご、野菜のコーナーへ、
「連呼と確認」という今まで見たことも聞いたこともない
会話を交わしながら、仲よく連れ合い歩いていく…
おもろきかな、おもろきかな、夫婦。

ちなみに、本日の女房の連呼ラストは「煮付け」。
対する亭主の最終確認は「賞味期限10月5日」であった。

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Ritsuko Tagawa
Ritsuko Tagawa

多川麗津子/コピーライター 1970年大阪生まれ。在阪広告制作会社に勤務後、フリーランスに。その後、5年間の東京暮らしを経て、現在まさかのパリ在住。

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