salitoté(さりとて) 歩きながら考える、大人の道草ウェブマガジン

そらのうみをみていたら。

2011-07-13
マルチな人・福山俊朗さん

今回、お話をうかがったのは、俳優、司会、歌のおにいさん、落語家…マルチに活躍する福山俊朗さん。

大学時代にサークル気分で芝居を始めたが、本格的にその道を選ぶことになったのは就職活動のある事件(!?)がきっかけ。バブル崩壊直前の売り手市場時期、高学歴の福山さんは、ある会社に入社を迫られ監禁された。それがあまりにもつらくて、たまたまそのときに実施されていた関西の人気劇団そとばこまちのオーディションを受け、見事合格。看板役者として人気を博した。その後もっと活躍の幅を広げたいと独立。2008年から開催している自らの企画・主演「マジックラジオ」ショーは15回を重ね、毎回満員御礼という。

福山さんは今企画「ふりだし」を始めたときに、ぜひ話を聞きたいと思ったひとり。ひとつには、同い年であること。そして、フリーな身で活動していること。「今」をどうとらえ、どう生きようと考えているのか…!?

唐突ではあるが、こんな質問をしてみた。

——この時代、「危機管理能力」を持っていないと生き残っていけないと言われるけど、福山さんはどのように身につけている? 

「僕はついてないことや不幸なことがいっぱいあるやんか。でも、最終的には僕は絶対大丈夫っていう、安心感はある。守られてるっていうか…。たとえば占いが大好きでいろいろチェックしてるんやけどな。携帯の占いで、山羊座が1位のときがあってん(福山さんは山羊座)。よし!と思った10分後にバイクにはねられてん。ケガとかはたいしたことなかったけど、その夜に3年半つきあってた彼女にフラれた。「なんで! 1位やのに!!」やで。その1ヶ月後ぐらいに、また同じ携帯占いをたまたまみたら、今度は山羊座が12位やってん。1位のときにそんなひどいことがあったから、12位のときは逆にすごくいいことがあるんじゃないの〜?って思うやん。そしたら、今度は車にはねられたの。で、救急車で運ばれた。そんときは半年、病院に通ってん」

…。
頻繁にそういうことが起こるらしい。
たとえば、こんなことも。

「なんや、耳がガサガサうるさいなーと思って耳鼻科に行ったら、鼓膜に毛が一本ついてるって。先生は、「大丈夫、すぐにとれるから」ってピンセットで取ろうとするんやけど、それが全然とれへん。ピンセットでつつくからめちゃくちゃ痛いねん!先生は「大丈夫、大丈夫」っていうんやけど、やっぱりなかなかとられへん。それを2、3分ぐらい続けられたわけ。ずっと痛い痛いっていうてたら、しまいには先生がバァーン!とピンセットを投げつけて「こんなイライラしてるときはとれへんわ!」っていいよってん。えー!でしょ? ぜんぜん意味がわからないんですけどー! それで京大病院を紹介されてん。放棄よ。毛、放棄。普通ないやん、そういうの。で、結局、毛はそのままやねん。ライブとかに行くと、今も毛がごわごわっていうてはるわ。」

生きていることそのものが「ネタ」なのではないか、とさえ思えてくる。
その生き方について、モットーはあるのかと尋ねたら、「自殺はしないと決めている」と意外にも(笑)、本質をつくような答え。

でもその後、インタビューに同席していた友人から信じられない言葉が発せられた。

「あれ? 死のうとしてたやん。歯が痛いだけで」

え?
なに?
歯が痛いだけで…?

「いや、それは…。つまり…、歯か歯茎かわからんぐらい、一帯が劇的に痛くなったの。歯医者に行ったら、親知らずの隙間に菌が入って、うんじゃったらしくて。消毒するしかないってことで、その患部を掃除するんやけど、うんでるところをほじくるわけやん。ガリガリって。もう、ショック死するぐらい痛いわけ。その痛みがぜんぜんよくならなくて、24時間痛いのが、1週間続いたの。もう、何をしても治らないから、この痛みから解放されるには死ぬしかないって思ったの。で、どうやって死のうかと…。そのときに鍼の先生と霊能者の友達のことを思い出して、死ぬ前に相談しようと思って…」

まず、霊能者の友人はこう言った。
「しゅんちゃん、それはもう危ない…。霊がしゅんちゃんのことを気に入って、死の世界に連れて行こうとしてる。」

そこで、お皿に塩を盛ったり火を焚いたり、いくつかお祓いの方法を教えてもらい、すぐに実施した。
その後、鍼の先生のところへ。すると、鍼を打った3分後に、痛みが引いた。痛みを和らげるつぼがあるそうだ。

「お祓いと鍼の治療のダブルの効果で治ったから、死ななかったけど。危ないところでした。(何が危ないねん!)」

その後、ちゃんとみてもらってお祓いをしたほうがいいと考え、霊媒師のところを訪れたら、2人だと思っていた霊が3人いたらしい。お祓いだけでは不十分とのことで、般若心経を朝晩、60日唱えるようにとのアドバイスに従い、しっかり声を出して唱えたという。

——でも、守られるの?

「守られたじゃん! 今、生きてるもん」

四六時中、笑ってばかりいた今回のインタビュー。私は驚くほど元気になった(笑)。「笑う」ってこんなに活力がわいてくるものなんだ。
実は1度、「マジックラジオ」を観に行ったことがある。福山さんがしゃべり始めると、客席のあちらこちらから突っ込みが入っていた。お客さんとのおしゃべりそのものが「ショー」だった。お笑いのセンスは1ミリもない私でも、福山さんと話をしていると突っ込み役ができるような気がしてくる。

そんな福山さんがずっと変わらずに持ち続けている思い。

「幸せに笑ってもらいたい」

(プロフィール)
神戸大学在学中に東映俳優養成所を経て劇団そとばこまちに入団。15年間在籍し、現在はフリー。劇団公演、外部公演を合わせ100本以上の舞台に出演。テレビ出演はNHK土曜時代劇「浪花の華~緒方洪庵事件帳~」など多数。2008年からは自身プロデュースによるトーク&ミュージックショー「マジックラジオ」もスタートさせ、京都市交響楽団との共演も果たす。現在は芝居やテレビ、映画以外にも歌のお兄さんとしてのコンサートや、焼酎亭バーボン名義での落語、ライブ活動、MCとしても活躍中。

いつもは京都・大阪を中心に活動している福山俊朗さんですが、8月には東京でも公演があります。
ぜひ、唯一無二の突っ込みどころ満載おしゃべり男「ザ・福山俊朗」を味わいに行ってください!
(今回はひとり芝居なので、突っ込んでもおしゃべりできるかどうかわかりませんが…悪しからず)

(INFORMATION)
〇INDEPENDENT:2ndSeasonSelection / JAPAN TOUR 
(一人芝居フェスティバル) 
<大阪>
日時:7月28日(木)〜31日(日)
(福山俊朗さんの出演は28日20時、30日14時、31日15時半の回です)
場所:in→dependent theatre 2nd (大阪日本橋)
チケット予約はこちら 
<東京>
日時:8月4日(木)〜7日(日)
(福山俊朗さんの出演は5日18時、6日19時30分、7日15時半の回です)
場所:こまばアゴラ劇場(東京都目黒区)
チケット予約はこちら 
チケット発売:6月11日(土)10時〜
☆チケットはすべて1日通し券になりますので、ご覧いただく日のチケットをご予約ください。
詳しい出演者、出演時間等はこちらをご覧ください。

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魚見幸代
魚見幸代

うおみ・ゆきよ/編集者。愛媛県出身。神奈川県在住。大阪府立大学卒業後、実家の料理屋『季節料理 魚吉』を手伝い、その後渡豪し、ダイビングインストラクターに。帰国後、バイトを経て編集プロダクションへ。1999年独立し有限会社スカイブルー設立。数年前よりハワイ文化に興味をもち、ロミロミやフラを学ぶ。『漁師の食卓』(ポプラ社)

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